ロイテリ菌は
歯周病/むし歯を予防

ギネスブックに記載されるほど
患者数が多い歯周病

2001年に“全世界で最も蔓延している病気”としてギネスブックに記載された歯周病は歯周病菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。2005年に全国2000余の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果によると、歯を喪失する主因のトップが歯周病で、半数近くを占めています。
歯周病による歯の喪失は30代後半から増加し、50~60代で非常に多くなっていることがわかっています。*1

抜歯の主因別にみた抜歯数(実数)グラフ

古くからヒトと共生してきた
「ロイテリ菌」が歯周病菌を抑制

古くから共生を続けてきた多種多様な細菌のなかでも、最も長くヒトと共生してきた善玉菌のひとつがロイテリ菌です。日本を含めた世界の人々の7人に1人が持っているといわれている乳酸菌で、近年その作用が明らかにされてきました。その中でも特に注目されているのが歯周病菌に対する抗菌作用です。ロイテリ菌は体内で唾液などによって活性化され、中性脂肪の分解物をエサに「ロイテリン」と呼ばれる天然の抗菌物質を生成します。ロイテリ菌はこのロイテリンによって歯周病菌を抑制することが明らかにされてきました。*2

歯周病患者19名(44~64歳)を2グループに分け、ロイテリ菌(2×108個)を含有したタブレットもしくはプラセボを30日間(1日1回)摂取し、その期間中には経口抗菌剤や抗生物質の使用を中止してもらいました。そして摂取期間前後にプラーク(歯垢)や歯肉の出血の有無、歯周ポケットの深さなどが確認されました。*3
ロイテリ菌を摂取した結果、出血が47%減少しました(p=0.005)。またプラークや歯周ポケットの状態についても改善し、いずれも統計的に有意な減少を示しています(プラーク:p=0.009、歯周ポケット4-5mm:p=0.022、歯周ポケット6mm:p=0.012)。これに対してプラセボグループでは口腔内の状態に大きな変化は確認されませんでした。
ロイテリ菌の歯周病に対する効果として、これまで複数の研究で同様の結果が得られており*4*5*6、この研究からもその効果が改めて確認されました。そしてこの結果に至った理由として、ロイテリ菌が持つ抗菌作用によって歯周病菌が抑制されたためと考えられます。

プラークの有無 出血の有無 歯周ポケット4-5mm 歯周ポケット6mm グラフ

*3 を一部改編

*1 8020推進財団 https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/bassi.pdf

*2 Hedberg M et al. Anaerobe. 2006.

*3 Vicario M et al. Acta Odontologica Scandinavica. 2013;71:813–819.

*4 Krasse P et al. Swed Dent J. 2006;30:55–60.

*5 Twetman S et al. Acta Odontol Scand. 2009;67:19–24.

*6 Vivekananda MR et al. J Oral Microb. 2010;2:5344–52.

歯周病菌がもたらす炎症を抑え、
「2型糖尿病」の予防と改善が期待できる

歯周病菌が招く炎症はインフルエンザや肺炎などに比べて非常に弱いものの、治療を行わないと5年、10年というスパンで炎症が持続してしまう可能性があります。このため2型糖尿病の大きなリスクとされているのです。そして、これらのことが明らかにされてきたことから、日本糖尿病学会は2016年に歯周病菌の危険性を認め、糖尿病診療ガイドラインで歯周病の治療を推奨しています。このためロイテリ菌の摂取によって歯周病菌を減らすことは、長期にわたる炎症を抑え、糖尿病の予防と改善をもたらすことが期待できます。

歯周病菌が体内に侵入して起る「早産」や「低出生体重児」のリスクを下げる

歯周病は早産や低出生体重児の危険率を高めることが明らかにされています。*7
歯周病菌がつくる毒素が胎児への栄養供給を阻害するほか、歯周病菌が引き起こす炎症により、子宮を収縮するプロスタグランディンという物質の分泌増加により陣痛が早まり、早産や低出生体重児を促してしまうのです。
妊娠中は女性ホルモンが増加して炎症が起こりやすくなることに加えて、食事の回数が増加する人が多いことから、歯周病を招きやすいことが指摘されており、歯周病菌は妊婦にとって非常に危険な存在ということができます。ロイテリ菌の摂取は妊娠期になりやすい歯周病を減らすことに加えて、歯周病菌の胎盤侵入を防ぎ、早産や低出生体重児のリスクを下げることにつながると考えられています。

早産・低出生体重児に対する歯周病の危険率 グラフ

*7 を一部改編

*7 Vergnes JN et al. Am J Obstet Gynecol. 2007 Feb;196(2):135.e1-7.

歯周病菌がもたらす炎症を抑え、
「2型糖尿病」の予防と改善が期待できる

高齢者が罹る肺炎として、肺炎の原因として有名な肺炎球菌に感染しなくても発生する「誤嚥性肺炎」が挙げられます。この誤嚥性肺炎は誤って食べ物などが気管に入ることが原因となります。その時に食べ物とともに口にいた細菌が一緒に入ると、肺で炎症を起こしてしまうのです。
そして肺で炎症を起こす細菌の代表的な存在が歯周病菌とされています。歯周病患者では歯周病菌が誤嚥によって肺に到達して肺炎を引き起こすことが知られており、このためロイテリ菌の摂取は、命にかかわる肺炎予防にも有効に働くと考えられます。

ロイテリ菌はむし歯菌を減らし、
「むし歯」を予防

むし歯菌を代表するミュータンス菌は、主に砂糖をエサにネバネバして水に溶けにくい「グルカン」という物質をつくり、歯の表面に付着します。このグルカンは粘着性が強いため、口の中に存在する多くの細菌をくっつけ、プラーク(歯垢)に変化していきます。そしてミュータンス菌はプラークの中で砂糖を分解して酸を作り、この酸によって歯の表面のカルシウムを溶かし、むし歯をつくっていきます。

食品によるむし歯予防の可能性を探るため、日本で市販されている18のヨーグルトに含まれる乳酸菌などについてスクリーニングが行われました。その結果、ロイテリ菌にのみミュータンス菌を抑制する可能性があることがわかったことから、ロイテリ菌を含むヨーグルトを用いた臨床試験が行われました。*8
健康な口腔環境を有する40名(20歳女性)を第1群と第2群に分け、第1群には発酵乳製品に広く使用されている乳酸菌(ラクトバチルス・ブルガリス及びS.サーモフィルス)を含むプラセボヨーグルト(95g)を2週間(毎日1回)摂取していただき、その後さらに2週間ロイテリ菌を含むヨーグルト(95g)を摂取していただきました。第2群にはロイテリ菌を含むヨーグルトを2週間摂取していただいた後、プラセボヨーグルトを2週間摂取していただきました。そして摂取期間中は毎日、ヨーグルト摂取後に口内のミュータンス菌について測定が行われました。

その結果、両群においてロイテリ菌含有ヨーグルトを摂取したことにより、ミュータンス菌が有意に減少することが明らかにされました(第1群:p<0.05、第2群:p<0.01)。また最初の2週間にロイテリ菌を摂取した第2群では、摂取後のプラセボ摂取期間でもミュータンス菌に対する有意な抑制効果が確認されました。
なお、一部の乳酸菌には歯のエナメル質を溶かすリスクが指摘されていますが、ロイテリ菌はその影響がごくわずかであることも確認されました。
これらの結果から、ロイテリ菌の摂取はむし歯の予防に有効に働くと考えられます。

ロイテリ菌を含むヨーグルトを用いた臨床試験グラフ

*8 を一部改編

*8 Nikawa H et al. Int J Food Microbiol. 2004 Sep 1;95(2):219-223.

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