胃の代表的な悪玉菌として知られているのが「ピロリ菌」です。胃の粘膜にすむピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃がんに関連する悪玉菌です。
ロイテリ菌にはピロリ菌に対する抗菌作用が期待できることから、その効果について検証が行われました。ピロリ菌感染により消化不良症状が確認された成人患者30名(25~56歳)を2グループに分け、胃酸抑制剤(オメプラゾール20mg)とロイテリ菌(8×105CFU)、もしくは胃酸抑制剤とプラセボを30日間(1日2回)摂取してもらいました。*10
胃酸抑制剤とプラセボを摂取したグループでは除菌を確認された人は15名中0名だったのに対し、ロイテリ菌を摂取した被験者15名中9名(60%)で完全除菌が確認されました(p<0.0001)。さらにこの結果に加えて、基礎試験ではロイテリ菌にはピロリ菌が胃表面の受容体への結合を阻害することが確認されていることから、ピロリ菌感染者はロイテリ菌摂取により有益な除菌効果が得られると考えられます。
*10 を一部改編
*10 Twetman S et al. Acta Odontol Scand. 2009;67:19–24.
感染性による胃腸炎は世界的に小児の罹患者が最も多い疾病のひとつです。その中でも特にロタウイルスによる急性胃腸炎は重篤な状態を招き、死亡事例も確認されています。
このロタウイルスによる胃腸炎が発症すると、乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌が減少し、悪玉菌を過剰増殖することが知られています。そのため乳酸菌を摂取することで症状を改善する可能性があることから、高い抗菌性を有するロイテリ菌の摂取による改善の可能性を調べる臨床試験が行われました。
ロタウイルスの感染による急性下痢と診断された生後6~36カ月の乳幼児(66名)を入院と同時に試験に登録して3グループに分け、治療を行うとともに高用量(1010~1011CFU)のロイテリ菌(21名)、低用量(107CFU)のロイテリ菌(20名)、プラセボ(25名)を与えました。*11
その結果、下痢を発症している患者の割合は、プラセボグループ(治療初日100%、2日目80%)に対して、高用量のロイテリ菌を摂取したグループは有意に減少しました(治療初日81%、2日目48%)。また一部の患者の入退院時の糞便を調べた結果、ロイテリ菌を摂取したグループでは乳酸菌をはじめとする善玉菌が退院時に増加していることが確認され、悪玉菌の増殖を抑制していることが推察されました。
これらの結果から、ロイテリ菌がロタウイルス胃腸炎を改善する効果と、その効果は摂取量と相関することが認められました。
*11 を一部改編
*11 Shornikova AV et al. Pediatr Infect Dis J. 1997 Dec;16(12):1103-1107.
便秘には便が作られる過程や排便の仕組みに障害があって起こる「機能性便秘」と、腸そのものの病変によって起こる「器質性便秘」がありますが、腸などの機能低下が主因となる「機能性便秘」が起こりやすいと考えられています。そしてこの機能性便秘の発症に関連する因子として、腸内環境の悪化が腸の蠕動に悪影響を与えていることが指摘されています。このため腸の蠕動を促進し、便秘の治療に有益と考えられるプロバイオティクスによる便秘改善の可能性について検討が行われました。
機能性便秘と診断されて入院した成人患者40人(平均年齢35.6±15歳)を20人ずつ2グループに分け、ロイテリ菌(108CFU)もしくはプラセボを4週間にわたり1日2回食後30分に摂取してもらいました。そして試験期間中、被験者に毎日の排便回数を記録してもらったほか、排便された糞便の状態(硬さや形状など)について評価が行われました。*12
ロイテリ菌を摂取した結果、1週間当たりの排便回数は0週目の2.68回から4週目には5.28回へと有意に増加しました(p<0.0001)。また4週目の1週間当たりの排便増加回数を比較するとプラセボグループの1.0回に対して、ロイテリ菌を摂取したグループでは2.6回と有意な差が確認され(P=0.046)、4週目の排便回数はプラセボグループの3.89±1.79回に対して、ロイテリ菌摂取グループでは5.28±1.93回と有意に増加しました(p=0.023)。この理由はロイテリ菌の摂取により腸内環境の改善を通じて腸の蠕動を促し、腸の機能を正常な状態に近づけたためと考えられます。
そして4週間目の糞便の状態について、この研究結果を報告した研究者は試験期間が限られていたため有意差は得られなかったものの、ロイテリ菌摂取グループの便の状態は改善されたとしています。そしてその理由としてロイテリ菌の活性に起因する水分と電解質分泌の増強により、便を軟化させた可能性があると指摘しています。
生活の質を低下させる慢性便秘に対する一般的な治療法は下剤による薬物療法です。しかしそれらの大半で副作用が確認されているため、使用できる期間は限られてしまいます。それに対してロイテリ菌をはじめとするプロバイオティクスは安全性が確認されています。これらの状況を踏まえて本研究の報告者は「機能性便秘の患者にとって、プロバイオティクスは有効な選択肢である」と考察しています。
*12 を一部改編
*12 Shornikova AV et al. Pediatr Infect Dis J. 1997 Dec;16(12):1103-1107.
口内の約500種類以上の菌のバランスをロイテリ菌がコントロールすることで、不要な悪玉菌を殺菌し、炎症を抑制します。歯周病や歯肉炎を抑え、歯槽膿漏になることを防ぎます。
スメルハラスメントの原因として話題を集めている「口臭」。ロイテリ菌の日常的な摂取が臭いの元となる悪玉菌を抑制することで口臭対策につながります。
ロイテリ菌は機能性腹痛(FAP)などの細菌、真菌性の感染症を減少させ、腸内環境を整えます。便秘の改善から「ピロリ菌」の抑制、ロタウイルス胃腸炎の改善に効果を発揮します。
腸まで生きて届き、免疫を向上させることで健康が増進されます。また、胃腸も健康になることで、感染症アレルギー、アトピー性皮膚炎の改善にも力を発揮します。